香取神宮は千葉県下総の一之宮の神社で、「神宮」と名乗れる数少ない神社の一つです。伊勢神宮、鹿島神宮、熱田神宮等、「神宮」を公式な社号として名乗る神社は特別の由緒を持つものに限られております。また香取神宮の初詣参拝数は45万人ともいわれ、全国でも有数な神社のひとつなのです。
香取神宮の祭神は経津主大神(ふつぬしのおおかみ)であり、利根川を挟んで鹿島神宮に祭られている武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)との関係が有名です。
崇敬される下総一之宮
鹿島神宮・香取神宮ともに、古くより朝廷からの崇敬の深い神社といわれ、 鹿島神宮の武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)、香取神宮の経津主大神(ふつぬしのおおかみ)も、ともに軍神として信仰され、大和朝廷による東国支配の拠点として機能を有していたとの説もあり、歴史や由緒は大変ふるくから続いている神社の一つです。境内に入ると雄大なご神木があり自然豊かな息吹が満ちているところであります。
また御神体が祭られている本殿の裏側に回ることができ、珍しく背後よりお参りもできるところでもあります。
ご神木
香取神宮境内の木々は千葉県指定天然記念物に指定され、拝殿を正面に右側、社務所正面にある巨木が御神木。杉で樹齢1,000年を超えているらしく、幹周りは7.4mあり、まっすぐに天に向かって伸びています。平安時代あたりからずっと見守ってくれていたのでしょう。ちなみに香取神宮の創建は明らかではありませんが神武天皇まで遡るとされています。
またご神木ではありませんが、三本杉という本殿の脇にあるものも有名です。源頼義の祈願で1本の杉が三股になったと伝えられる三本杉が知られています。現在1本は枯れてしまい根元の部分が空洞となって残っているだけです。
ところでよく香取神宮に限らず御神木にスリスリして、運気をいただこう、という輩が大勢いらっしゃいますが、樹木を痛めるだけなので避けましょう。運気をもらいたい、開運したい…、と思うのは人の性(サガ)ですが、敬うこと、感謝することが先立つべきであり、ご神木とは触るものでも、運気をもらうものでもありません。御神木とはそこの神域にいらっしゃる神々様や眷属たちの依り代となり降りられ宿るもので、触られている樹木の気持ちやそのご神木に宿られる神々様の気持ちに立てば、易々と触るものではないのです。樹木も生き物であり滋養を蓄えて生きるように「気」を内側に溜めてご神木となるものです。やはり「自然のまま」でないと数百年も1,000年も生き延びませんし、御神木にもなれません。
香取神宮の装飾
拝殿の装飾
香取神宮の拝殿の装飾は実に鮮やかで美しい、異国情緒を漂わせる模様でもあります。黒をベースに彩られた色彩は見事なものです。拝殿屋根の下部分は特に鮮やかな装飾が施されています。なんとなく大陸側の影響があるのか? とも受け取れるような模様なので、ぜひ訪れた時はよく見ていただきたいポイントでもあります。
千木と鰹木
本殿は平安時代には伊勢神宮と同様に20年ごと建替の制度がありましたが、戦国時代には衰退してしまったそうです。現在の本殿は、元禄13年(1700年)徳川幕府の手によって造営されたものになります。その本殿の屋根に目を向けると龍神様の角のような装飾があるのが、神社建築の特徴の一つでもある千木(ちぎ)と鰹木(かつおぎ)です。
屋根の端っこに取り付けられている千木は龍神様の角のような形をしています。この千木の形には、「外削ぎ」と「内削ぎ」の2種類あり、「外削ぎ」とは千木の先端切り口が外側に向いていて地面とは垂直になっているもの、「内削ぎ」とは千木の先端切り口が地面と平行になっているものです。
香取神宮の場合は千木の先端が外側に向いて切られている「外削ぎ」です。
鰹木は屋根の上に棟に直角になるように何本か平行して並べた装飾で、龍神様の背骨のような形をしており、香取神宮には写真のように9本の鰹木が施されています。鰹木も神社によって本数が決められているようでバラバラで特に法則性はないようです。
千木・鰹木ともに本来は建物の補強が目的だったと考えらますが、後世に装飾として発展し現在では神社の神秘性や聖性を象徴するものとなっております。
俗説ではありますが、千木が外削ぎであれば男神、内削ぎであれば女神、鰹木の本数が奇数であれば男神、偶数であれば女神であることを表している、とも言われます。ただし、神社によっては単純にそうとは言い切れない部分もあり、そこは謎や神秘性を残す意味でよいのかもしれません。
香取神宮への初詣
香取神宮の初詣参拝数は45万人ともいわれ、全国でも有数です。駐車場も整備されていますので遠方より来られる方も多く賑わいです。食べ物もおいしく「亀甲堂」の厄落とし団子など、大変人気なので参拝後にお勧めです。
ちなみに私自身の香取神宮への初詣は、ちょっと時期をずらして節分あたりに参拝します。なぜかといえば、お正月の時期は人気過ぎて騒がしく清々しさには欠けてしまうからで、参拝人数が減ってくる節分あたりに行くことが多いです。
また秋には七五三でも賑わいますし、厄払い祈願や神前結婚式なども多いそう。実は私もここで神前結婚式でした。その写真が当時の写真スタジオ屋さんのチラシとして、新聞折り込みに大々的に載ってしまいましたが…。
余談ですが…。私自身、人気(ひとけ)を避けて夜の参拝をする場合があります。ここでは深夜でもライトアップされており時々警備の方も回っておりますのでそんなに怖くありません。ゆっくりじっくり祈りたいときは夜がおすすめなのです。シーンとした中、深く祈りたいときはいい感じです。
キッコーマン醤油との関係?
醤油で有名なキッコーマン。千葉県野田の全国的名産品ですが、実は香取神宮と大きく関係があります。香取神宮が鎮座する土地は、中央が低く周囲が高い地形なので、亀甲山(かめがせやま)と呼ばれています。つまり亀甲(きっこう)です。亀甲は縁起の良い形ともいわれ六角形をしており、ダビデのマーク(六芒星)にも似てますね。六という数字は、数霊として「陰の極まり」「陰極まり陽」「一陽来復」の意を持ちます。なので吉象といわれるのでしょう。
キッコーマンは元々は「亀甲萬」。亀甲は、香取神宮に伝わる宝物「三盛亀甲紋松鶴鏡(みつもりきっこうもんまつつるきょう)」及び香取神宮の鎮座する土地の形から、そして鶴は千年亀は万(萬)年から「萬」の文字をとり、合わさって「亀甲萬」・「キッコーマン」となったようです。