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NASAの火星探査機ヘリコプター

 地球以外の星で大気中を動力飛行の探査をするという、人類史上初のプロジェクトが進行中。
 先日、火星に到達した探査機「パーサヴィアランス(Perseverance)」から降ろされた小型ヘリコプター「インジェニュイティ(Ingenuity)」が火星の赤い空を舞う予定だ。

目次

火星探査機の使命

 火星探査機「パーサヴィアランス(Perseverance)」には4つの科学目標すなわち使命が課せられている。

  1. 生息可能性の探索:微生物が生息可能な過去の環境を特定する。
  2. 生命存在指標 (biosignatures) の探索:そのような環境に生息していた可能性を有する 過去の微生物の痕跡を、特にその痕跡が長期間保存されていることが知られている特殊な岩石の中から探す。
  3. サンプルのキャッシング:コアロックとレゴリス(「土壌」)のサンプルを収集し、火星の表面に保存する。
  4. 人間のための準備:火星の大気から酸素生産を試行する。

火星探査プログラムの目標は、火星を探索し、高帯域幅の火星/地球通信ネットワークによって相互接続された慎重に選択された一連のロボットオービター、着陸船、移動研究所を通じて、科学的情報と発見の継続的な流れを提供することです。

インジェニュイティ(Ingenuity)

火星探査機ヘリコプターが飛ぶ
credit:NASA

  地球外で史上初の動力飛行を試みるのはインジェニュイティ(Ingenuity)。自由自在に飛び回る、というところまではいきませんが、約5メートルほどの上昇でき、約90秒程度で距離にして約300メートルまで飛行可能とのとこです。たったそれだけ…、と拍子抜けするかもしれませんが、場所は地球と環境が全く違う火星です。大気の密度も温度も全然違う環境の中、そして人が直接微調整して操縦することなくプログラミングされた中で飛行します。そもそも人類の初めて動力飛行に成功したのは1903年12月ライト兄弟であり、その初飛行は飛行時間は12秒、飛行距離36m程度とも言われています。それに比べたら今回のフライトはけた違いに困難であることは明白の中、その技術的発展の偉業は計り知れないものでしょう。

インジェニュイティの仕様

 小型ヘリコプター「インジェニュイティ(Ingenuity)」は、火星に到達した探査機「パーサヴィアランス(Perseverance)」の腹から降ろされました。

https://mars.nasa.gov/embed/25792/

火星探査機の小型ヘリコプター「インジェニュイティ(Ingenuity)」
credit:NASA

重量

1.8キログラム(地球上)   
火星では地球に比べて重力が弱いので、火星では0.68キログラム程度しかないそうです。

サイズ

幅(長編)1.2メートル程度 高さ0.5メートル

動力

ソーラーパネルによってリチウム電池を充電

飛行範囲/高度

 最大約300メートル 最大高度は5メートル

 容易いように思えますが、火星の大気は薄く地球上の大気密度の100分の1程度、気温マイナス90度にもなるため、飛行技術は大変厳しいものになるといわれています。

火星探査の歴史が作られる

 1903年12月、地球上では初の動力飛行をライト兄弟が成功させています。実はその時に飛んだ飛行機の材料一部が、地球外での初となる動力飛行を行うインジェニュイティ(Ingenuity)に搭載されているようです。ライト兄弟の初飛行はごく一部の人しか目撃されていませんでしたが、今回の火星初飛行という偉業は人類の多くが目撃者となるでしょう。

1903年12月ライト兄弟の初飛行
1903年12月17日 ライト兄弟が動力による初飛行 credit:NASA

 地球と違い火星の大気の密度は地球の1%程度、重力は約3分の1しかなく、動力飛行を行うことは相当困難なことが予想されます。また写真画像からはわかりずらいですが気温は夜ともなればマイナス90度ともなりヒーターで温めなければ電子部品とともに凍結してしまう環境です。

米航空宇宙局(NASA)の超軽量小型ヘリコプター「インジェニュイティ」の火星での試験飛行について説明する図解
credit:NASA 米航空宇宙局(NASA)の超軽量小型ヘリコプター「インジェニュイティ」の火星での試験飛行について説明する図解

宇宙への探求

奇しくも2020年8月に現在のアメリカ大統領バイデンが民主党大会で述べている。

「民主党は米国人を再度、月へと送り込み、さらにもっと遠くの火星を目指します。NASA(米航空宇宙局)はその後、太陽系探査の段階に進む予定である」

さらに過去を遡ると、2010年には当時のオバマ大統領が2030年代までに人類を火星軌道まで送り込むと政策発表を行っている。やはりいつの時代でも宇宙はロマンの塊なのだろう。時々聞かれる言葉「なぜ我々の足元にある地球も未だ未踏の地もあるにもかかわらず、膨大な国家予算をつぎ込んでまで、月や火星に行くのか?」。それには地球から離れてこそ理解できる事柄も多くあるのだろう。国の威信のため、国力誇示のためというのは邪道だが、真の学問追究、宇宙の理(ことわり)を探求するにはある程度は必要な事と言えるのだろう。

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